「カミングアウト」というと、とかく同性愛者の方々が、周囲に隠している事実を明るみにする、という意味合いが強いですね。
実際には、とかく周囲からタブー視されるだろうことを、長らく秘密にしており、それを明らかにすることすべてが「カミングアウト」といえます。
世の中の価値観や環境によっては、まるで関わるすべてから否定されてしまうかもしれないので、とても告白することはできません。
しかし、実際は、確信的な内容よりも、周囲に言えない、という状況のほうが、本人を痛く苦しめています。
場合によっては、カミングアウトすることで、自分自身だけでなく周囲にも迷惑をかけてしまうかもしれない、と考えるからです。
皮肉にも、本人がカミングアウトできない理由の根本は、「自分の存在価値を否定するであろう」と思う人たちとの、人間関係との葛藤にあります。
カミングアウトの問題を抱える方は、とかくこの人生で大きな自己肯定の課題を課されているようです。
カミングアウトは、社会的タブーが強い内容ですと難しいものですが、時代とともに確実にタブーの基準は変わっていきます。
多くの人は自分の価値観にないものや、馴れないものに関わることに不安や怖さを感じます。だから、締出したり、否定したり、抹消したくなるようです。不安や恐れに権力が伴うと、多くを巻き込んでいきます。
Oさんは、複雑な事情でお子さんを育てることになりました。事情が解決しないまま、数年が経ち、果たして今後は解決していけるのか?家族を持つことはできるのか?子育てに影響しないか?と心配されていました。
信じて進んできても、ごく信頼する身内を除いては、秘密にしておくしかありませんでした。
Oさんにとって秘密にしておかなければいけない、と思う時期が続く限り、皮肉にも現実は否定的に捉える傾向があります。どこかで、本気でOさんが状況を肯定したときに、気付けば、周りは理解者ばかりになります。
個人レベルのことは、自分の状態を明らかに、正直に生きるほうが、結局は理解者や協力者が集まります。
ちなみに、近年は同性愛者の方がカミングアウト云々で相談されることはほとんどありません。メディアの影響か、すっかり認知されて、一般と違わず、恋愛やお仕事の相談、家庭のことなどで来談されますね。