これまで家族・家庭生活を第一に考えて、概ねの人生を過ごしてきた人が、ふっとした拍子に、「この生き方を続けることはもはや無理!」となるときがあります。
ご本人さえ、そんな心境の変化に、
「どうしちゃったの私?一体何が起こったの?」
と不思議で仕方ありません。
家族が嫌いになったわけでも、特別な問題が急に起こったわけでもないようです。
「生理的にこのままでは、もうダメ!」「無償に(家族/特定の家族メンバーと)関わりたくない!」
・・・と感じ始め・・・・
カウンセリングにお越しになるときには、ハッキリとおっしゃいます。
それまでに、夫や妻、パートナーに離婚話は勃発していたり、弱音・苦言を吐いておいてでですが。
このようなケースでは、離婚にいたるような具体的な事件は起こっておらず、日常や感情の積み重ねですので、(急に)そう言われてもパートナー側は、どうしたらいいのかわかりません。
なんとか応えようとしたり、愛情を示そうとしますが、そういう言動がかえって気持ちを逆なでます。
「どうしたいの?」「好きにしたらいい」
そんな(愛情ある)言葉や態度が、白々しく感じるようです。
そこで、実生活に余裕のある方は、別居、マンション・ウィークリールームなどを借りて、別居がはじまります。
この先、どうなるのか?こんなことをしていて大丈夫なのか?
理性では、さらに不安や疑問が湧いてきます。
・・・・おおむね、そのようなケースの結論は、別居や家族からしばらく離れて過ごすことは、後々の好転材料になるようです。
どうやら、このような心境は、家族の生活に変化が起こったときに発生しています。
子供が結婚をした、年齢の節目にきた、学校に合格した、手が離れた、仕事が落ち着いた、昇進・昇級した、長年の不安や問題から解放された、安定した状態が続いている、家族外の人間関係に変化があった・・・
昔から気が緩むといいますが、これまで力をいれてきたことがゆるむと、(リラックスともいうが)気がぬけて、別のことが表・明るみにでます。
これまで、隠していたり、潜んでいたこと、ともいえます。
抑圧したり、鬱積していたり、我慢の限界がきた、ことかもしれません。
ひと昔前「空の巣症候群」という現象が流行りました。家族構成に大きな変化がなくても、エネルギーに変化があったときには起こります。
子供の頃から体が弱く、学校を休むことが多かった長男は高校生になり、ときよりしっかりした側面が見えてきました。
そして、長女はおつきあいしていた彼と結婚が決まり、来年には両家の披露宴を控えています。
そんな時期に、急激な体の疲れと倦怠感、何もしたくなくなってしまったKさん。
「動けないんです・・・」と。
ゆっくり休んだり、ご自分の好きなことをなさってよい状況なのに、気づけば家族の心配ばかり頭がいきます。
母親の異変に気づいた長女が、しばらく実家を出てホテルに泊まることを勧めました。
家を出ても、しばらくは家族からの不快に感じるときもあれば、気がかりで仕方がありません。
Kさんにとっては、母親や妻として役割からシフトする時期にきています。
昭和のお父さんたちが、定年になって初めて向き合う体験に似ているかもしれません。
しかし、Kさん一家の「家族エネルギー」は、稀にみるほど鮮やかなピンク色です。それだけお互いがなくてはならない絆で繋がっています。だからこそ、個々の自立心も必要な時期に近いようでした。
ハタからみると、絵に描いたように「よいご家族ねー」と思われていたTさん一家。
それが当たり前であり、そのために、仕事も妻・母親業も、ほぼ完璧に?切り盛りしてきました。
子供たちは受験を控える年頃になり、ご自身の職場ストレスもさして感じなくなった頃、無償に家族の行動が疎ましくなってきました。
夫に訴えても「好きにしていいんだよ」と、穏やかな発言全開です。
そこで、Tさんは、マンションを借りて別居をはじめました。
飼っているわんちゃんのことだけは、気がかりで仕方ありませんが、自由な場所と時間があることで、だいぶ「自己の境界線」が出てきました。
心境の変化が発生して1年余り経ち、ひょんなことから、ご家族のもとに自然にお帰りになりました。
ご家族のもとに戻ってからいらしたカウンセリングでは、「なんでひょうんなことから戻ったのか、私も不思議で・・・」と。
環境や役割をかえることで、ある意味「ご自分」を取り戻したのかもしれません。
ちなみに、家族や夫婦が概ね納得して距離を置いたり、別居のように環境をかえることが難しい場合・・・不倫関係など第三者・第三の場所をあつらえる方もいます。
それは無意識に取る行動なのか?めぐりあわせを招くようです。