「トラウマ」には、本人が明確にトラウマだと自覚するものと、全くもって自覚していないものがあります。

 

事故、事件、災害、ショックなど、自らがハッキリと経験を自覚したものは、前者です。また、かなり歳月が経って、過去の体験を反芻したときに、「◯◯◯はトラウマだった」と信じ続けることも、自覚するトラウマを背負うことになります。

 

後者の、本人が自覚しないトラウマは、ある経験をしたときにはショックだと自覚しなかったり、自分ではそれほど酷いことではなく、乗り越えることができた、ケリがついている、と思っている類いのものです。

特に大人になり、気丈に生きてきた人、明るい行動的な人たちの中に、隠れたトラウマを抱えたままのケースがあります。

 

代表的なものとして、

① 特定の行動に対して、やたらに躊躇する気持ちが働き、動けなくなる。

② 特定のタイプの人、特定のシチュエーションに対して、急に信じられなくなる。

③ 特定のことに対して、白か黒か、有りか無しか、善か悪か、など、二者択一の選択をしなければならないと、思ってしまう。

などです。

 

Nさんは、ハタから見るととても行動的な冒険家です。本人も認める行動派なのですが、長期家族の元を離れて遠出をするときに限り、いつも躊躇してしまいます。結局、遠出はできるのですが、間際まで葛藤するそうです。

Nさんは、学生の頃に、ある冒険旅行に友人達と出かけたいと計画を立てたことがあります。ところが、間際になって、父親に強く反対され、そのときは父親の気持ちを取り込み、仕方ないと、諦めたそうです。

今は、その父親とは特に確執はないと思っているNさんですが、当時の経験が、のちにNさんの行動のブレーキになっていました。

 

 

Sさんは、おつきあいしている相手のほうから、告白されると、それまで自分のほうが抱いていた熱い思いが、ひゅーんと冷めてしまうことが続いていました。本当は好きで思っているはずなのに、Sさん自身が何より不本意な相手との結果に、困っていました。

Sさんは、成人してから最初におつきあいした彼がいました。その相手とは、ある時突然、彼の都合で別れを告げられたそうです。そのことにはもちろん傷ついたのですが、実際にSさんのパターンを作っていたものは別にありました。

Sさんの交際は、彼からの熱い告白から始まっていたのです。無意識に、相手から近づいてきたり告白されると、自分が傷つく結果になると、プログラムされてしまったようです。